ISO 13485:2016のポイント

2016年版でISO 13485はどう変わったか?

今回の改訂でもっとも大きな改訂は品質管理システムのすべてのプロセスにおいて、
リスクマネジメントアプローチが採用されたことです。

他の細かな変更点としては

  • 品質管理システムで使用されるコンピュータソフトウェアの妥当性確認
  • 技術文書標準で文節単位まで構造化された技術文書、設計および開発文書の構築およびメンテナンス
  • 苦情処理プロセスの新しい要求事項
  • 滅菌バリアシステムおよび滅菌プロセスの妥当性確認
  • 品質マネジメントシステムに携わる要員の必要な力量、ならびに教育手段の有効性の文書化と検証

上記があります。

また、ISO 13485:2016の整合は、
先般発行された欧州医療機器規則(MDR)
および欧州体外診断用医療機器規則(IVDR)への適合に向けた一歩でもあります。

MDR、IVDRは3年または5年以内に現行の指令からの移行を求めています。

再び、ISO13485とは

ISO 13485の目的は、世界中の医療機器法令の整合化を促進することです。

ISO 9001では、顧客とか仕組みの改善といった事柄とは直接関係がないのです。

ISO 13485の中には、「国又は地域の法令(が要求する)」といった文言が頻繁に出現します。

ようするに、法令に従えということです。

ISO 9001を始めとする他のISO規格は、自社の特徴を生かしたマネジメントシステムを尊重しています。

しかし、ISO13485では、何よりもまず各国の医療機器に関する法令を順守するシステムが優先されます。

それが、ISO 13485:2016の特徴です。

ISO 13485改訂の背景は医療機器の進歩

リスクマネジメントに関しては、
後半、詳細に説明します。

その前に、簡単なところを説明させて下さい。

今回の改訂では「現状の各国規制との整合」も重視されました。

また、 ISO 9001の2008年版で行なわれた改訂内容に関する変更を取り入れています。

最新版のISO9001 2015ではないことが重要です。

加えて、今回の改訂は、コンピューターの発達に伴った、
医療機器の発達に合せた部分も多々あります。

AIを使った、医療機器の研究をされている方は現在の法規制上、
できないことがあまりに多いことにウンザリしていると思います。

例えば、患者をコンピューターの前に座らせると、
カメラがあなたの顔を写し、
センサーがあなたの体に接触します。

その状態で、あなたのバイタルサインを収集し、
あなたの診断を行います。

AI医療機器

コンピューターは、クラウドに繋がっていれば、
世界中の医療データを集めることも可能です。

つまり、バイタルサインから病名を診断することは、
すでに不可能では無くなっています。

しかし、もしこの医療機器を完成させても販売することはできません。

法令上、日本では医師以外は「診断」と言う医療行為を行うことができません。

今回のISO 13485の改訂では、
コンピューターソフトウェアも対象になりました。

まだ、十分ではありませんが、
今後、さらなる医療機器の進歩に合せて、
規格も進化すると思います。

また、それによって各国の薬事法も見直されると思います。

リスクマネジメントも明確に取り入れた

品質マニュアルを作成して、
それぞれの手順書を作る時、
企業の担当者さんが、最初に悩むのはリスクマネジメント手順書です。

これはほぼ例外がありません。

そもそも、
リスクマネジメントとは何でしょう。

リスクマネジメント

リスクマネジメント(risk management)とは、リスクを組織的に管理し、
損失などの回避または低減をはかるプロセスを言います。

リスクマネジメントは、
リスク評価とリスク対応の2つからなります。

リスク評価

リスク評価は、ある事象がどれくらいの確率で、
どれくらいの影響を与えるのか?

それをかけ算で計算します。

リスク対応

また、リスク対応は

リスクの回避、低減、共有、保有の4つからなります。

リスクの回避
マネジメントやプロセスなどによりリスクの発生を回避する。たとえば、手順書を作成したりする。

リスクの低減
本質安全と機能安全などがあります。

リスク共有
リスクを他社と分割すること。リスクの転嫁、分散などがあります。

リスク転嫁
リスクが顕在化した場合の損失補償を準備することです。保険が掛けられる場合には、
有効な対策の一つとなります。
この場合、リスクを保険会社に転嫁(または移転)するともいいます。

リスク保有
対策を何もしないこと。リスクを受容するとも言います。

発生頻度が低く、損害も小さいリスクに対して用います。

前置きが長くなりましたが、
リスクマネジメントは、
これを製造・販売する医療機器の全てに対し行います。

詳細は、またどこかで説明します。

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