医療機器製造販売業者も要注意!
2018年11月薬機法改正案を議論する厚生労働省の審議会が開かれました。
そこで、薬機法に違反した広告や文章に対して、
罰金ではなく課徴金制度を導入する方向で話がまとまったのです。
製薬業界では、臨床試験データの改ざんが行われたノバルティスファーマの「ディオバン事件」がありました。
(註:2017年3月16日、ノバルティスファーマは、無罪判決ではあるものの、この問題の本質は医師主導臨床研究において弊社が適切な対応を取らなかったことにあるとの声明を発表しています。)
また、武田薬品による降圧剤「ブロプレス」の誇大広告など、違法行為が相次いで起りました。
これを背景に、違反で得た経済的利得への対応が不十分との認識が強まっていたからです。
今回の法改正で課徴金の対象として想定するのは、
- 「虚偽・誇大広告」(第66条)
- 「未承認医薬品の広告の禁止」(第68条)
- 「未承認医薬品等の販売、授与等の禁止」(第14条1項、9項、第55条2項等)
健康食品も、「ガンが治る」など効果効能をうたえば「未承認医薬品」として規制を受けることになるのです。
そしてその改正案を2019年の国会に提出する予定なのですが、
これは間違いなく法案として成立すると思います。
これによって今後どういう変化があるのか、まとめてみました。
薬機法違反、なんで課徴金制度が求められるのか
基本的に薬機法違反は刑事罰です。
これにより行政指導や罰金、懲役が用意されているのですが、
基本的には刑事罰というのはそこに起訴や裁判といったプロセスを踏まえなければいけません。
そうつまり、時間がかかるわけです。
しかも罰金に関しても、他の法律との兼ね合いで、
どんなに誇大広告や違反表示で大儲けしていても当たり前の額しか罰金として取られません。(最高200万円)
しかも、業許可の取り消しや業務停止命令という刑罰もその効果は微妙。
特に医薬品や医療機器と言ったものは、常にそこに患者さんがいるために、
業務停止命令は簡単に出せませんし、でたとしてもその出荷を止めることができません。
また、そもそも薬機法の定める業許可が必要ない業者には、業許可の取り消しは効果がありません。
こういった、薬機法の弱点を埋めるために課徴金制度という発想になっているのです。
課徴金制度とはどういうものか
課徴金制度自体は景品表示法などですでに導入されている制度です。
もちろん具体的にどのような方法を取るのかは不透明ですが、
一般的には製品の売上額に一定の算定率をかけて算出することになるでしょう。
算定率に関しては医薬品や医療機器の利益率から勘案して算出される見通しです。
2019年3月の閣議決定では売上の4.5%ととされていますので、
今後その法案がそのまま通過すれば、4.5%とということになるでしょう。
しかし、薬機法を始めとする医薬品や医療機器に関する法律や制度は、
世界基準、特に米国の基準を採用するのが多いもの。
そうなると、今後は米国のように違反で得た利益を全額。
ということになる可能性も当然あるのです。
制度は一度動き出すと、状況に応じて形を変えるのが常ですから、
今後より一層厳しくなることも予想して置かなければいけません。
医療機器製造販売業は関係あるのか
今回の改正は、主に医薬品を対象にしたものです。
これは、製薬大手のノバルティスが販売していた高血圧治療薬ディオバンの論文不正事件の影響が強いため、
特に医薬品の分野に大きく比重の偏った改正になっているため。
しかし、言うまでもなく薬機法には医療機器は含まれます。
改正案においても、薬機法第66条が課徴金対象の条文とされていますから、
これにはとうぜん医療機器は含まれています。
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、
医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関 して、
明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
ですので、過敏になる必要はないですが、知っておく必要はあります。
これまでのように「罰金対象になってもせいぜい200万だよな」と思っていると、大きな損失を生むことになりかねないと知っておきましょう。
適正な表示であれば問題は無し
もちろん言うまでもなく、現在薬機法に違反するような誇大広告などをやっていなければ問題ありません。
しかし、罰金が安いからと言ってスレスレを攻めていたり、
グレーゾーンを狙っていたり、もしくはこれから医療機器製造販売業に転業しようというのであれば注意は必要です。
しっかりと薬機法の規定を吟味して、その範囲内に収まるように工夫をしなければいけないのです。