どんな指標に注意すれば良いのか
基本的に医療機器業界というの経済動向に左右されにくい業界です。
というのも、人間が医療費を抑えようとするのは最終段階で、娯楽遊興費、食費、雑費、教育費を抑えて最後が医療費という順番だからです。
そのため、医療機器のみならず医療業界全体は景気動向に対して鈍感です。
私も会社勤務の時、それを肌で感じました。
もつろん、ゼロではありませんが、他の業界(半導体、自動車、家電品)に比べて遙かに安定です。
ただ一つだけ大きく影響される指標があります、それが人口。
人間の数が減れば当然医療を受ける全体のパイが減りますので、
医療全体はもちろん医療機器業界にとっても規模は縮小傾向になるはずです。
まして、医療機器は典型的な国内産業です。
国内の人口、人口動態に敏感な反応を示します。
「平成27年(2015年)国勢調査(抽出速報集計)」(総務省統計局)
また、高齢化率も重要です。
主要国の高齢者割合の推移
見て分る通り、平成7年まで主要国の高齢化率は同じようなものです。
しかし、20年後の平成27年を見て下さい。
しかし、これも、一見マイナスのようですが中小医療機器業界にとってはプラスにもなり得ることなのです。
大手医療機器業界はこれからどう戦っていくのか
大手医療機器業界は人口減少で減っていくパイの奪い合いになる。
これは間違いのないはなしですが、
ではどうやってその状況を乗り切っていこうとしているのでしょうか。
それには大きくわけて3つあります。
その1 M&Aによる統廃合
医療機器業界、
特に医療機器の卸業界においていま活発に行われているのがM&Aによる統廃合。
つまり企業の合併ですとか吸収、
買収と言った形で企業が複合化しコストを抑えていこうという動きで、
金融危機の時に銀行がやったのと意味合いはほぼ同じです。
これにより無駄なコストは激減し、
また史上への過剰供給もコントロールし安くなるというわけです。
その2 イノベーションによる打開
次がイノベーションによる打開です。
これはどういうことかというと、
人間が減ってきているのですからその人口減に合わせた新しい医療機器の開発によって競争力を維持していこうという考え方です。
特にITの分野AIの分野を使ったものが盛んですが、
それだけでなく小さなコストカットの積み重ねも主流。
いかにお金を使わずにいけるのかを考えていると考えていいでしょう。
その3 海外進出
日本に人口の減少が見られても東南アジアや南米、アフリカなどは違います。
この分野に関しては、まさに異業種の参入が増えているほどに活況を呈していて、
特に海外企業などは日本よりも積極的に海外進出を図っています。
今は規格や規制に対応するコストを企業が重く見て日本の出足は低調ですが、
今後は間違いなく日本でも伸びる分野でしょう。
また、医療機器は命にかかわるものですから、
日本のものづくりがこれまで積み重ねてきた「まっとうに良いものを作る」というブランドイメージが大きく生きる分野でもあります。
私も経験がありますが、
中国の部品メーカーでは管理面が杜撰で、
「これは、体の中に入るものなので、洗浄や梱包もしっかりやって下さい」
と頼んでも、「分りました、問題ありません」と言いますが、
全く話になりませんでした。
中小医療機器、特に部品メーカーは大きなチャンス
M&A、イノベーション、海外進出。
この3つの要素の中で、中小医療機器メーカー特に部品関連のメーカーにとっては、
その2とその3の影響で大きなチャンスがあるのです。
イノベーションとはモデルチェンジの繰り返し
イノベーションとは何か、それはモデルチェンジの繰り返しです。
新しい潮流をつくったり新方式を作るということは、
旧来の医療機器が新しく生まれ変わるということですから、そこに必要なのは新しい部品です。
となれば、医療機器の部品を作る業界にとってこれほどありがたい話はありません。
要は需要がぐんと上がるということなのですから、これはチャンス以外の何物でもないのです。
メイドインジャパンの下支えとして
海外進出において日本の医療機器のブランドイメージはその品質の良さです。
しかも、医療機器は日用品でも家電でもなく
『医療用の機器』なのですから、コスト意識よりも品質のほうがより重視される分野です。
となれば、日本のものづくりを継承する中小製造業に光が当たるのは難しい話ではありません。
それこそ『下町ロケット』ではないですが、コスト意識押さえた高品質を求めた時に、
日本の中小の製造業の価値は世界で有数のものであることは間違いないのです。
医療機器業界を支える中小製造業への期待
日本は国策として、今医療機器業界に力を入れています。
しかし、国の政策と実際の業界の動きがリンクするのが遅くなるのは世の常で、
現実に医療機器業界が盛り上がるのはまさにこれから。
そして大事なことは、
斜陽産業である製造業から脱却し医療機器業界に転業するチャンスも、
まさに今だということなのです。