2018年の医療事故は4500件以上、その実態に迫る
日本医療機能評価機構が2019年7月5日に2018年版『医療事故情報収集等事業』を発表しました。
これによると、2018年の一年間で日本で起こった医療事故の件数はなんと4565件にも登り、
そのうち7.8%に登る356件で患者が死亡しているという調査結果になっています。
また、医療事故未満の事例に至っては92万件。
いわゆる、もうすこしで医療事故になるところであったヒヤリハット事案になるのですが、
この事案において、もし医療事故であった場合死亡事故となった恐れがあるものが1.2%。
つまり、一歩間違えば1万人弱の医療事故の犠牲者が生まれていたということになるのです。
医療事故の現状
では医療事故がどのように起こっているのかその細かい現状を見ていきましょう。
死亡事例は横ばい、障害残存が微増
日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業によれば死亡事故の割合はほぼ横ばい。
そのかわり、障害残存の可能性が高い医療事故が増加しており、
やはり継続して医療事故防止の取り組みは重要であることは代わりありません。
【内訳】
①死亡事故(前年比0.1ポイント減)
②障害残存の可能性が高い(前年比0.6ポイント増)
③障害残存の可能性が低い(前年比1・6ポイント減)
④障害残存の可能性なし(前年比0.8ポイント減)
事故原因
事故原因に関しては、その第一として圧倒的なのは療養中の世話によるものになります。
ついで、治療と処置、薬剤、ドレーンとチューブとなっており、
この中で治療と処置およびドレートとチューブによる医療事故が大幅に増えているのが目につきます。
医療現場の一つの課題としてピックアップされる時が来るのかもしれません。
【内訳】
①療養上の世話1553件(前年比6ポイント減)
②治療・処置1283件(前年比1.4ポイント増)
③薬剤418件(前年比0.6ポイント増)
④ドレーン・チューブ360件(前年比1.1ポイント増)
診療科
診療科に関しては、これまで通り整形外科での医療事故が最も多くなっています。
【内訳】
①整形外科665件(医療事故総体の11.8%)
②外科469件(医療事故総体の8.3%)
③内科369件(医療事故総体の6.6%)
④消化器科356件(医療事故総体の6.3%)
ヒヤリハット事例の増加はプラス材料
医療事故に対しその未遂と見えるヒヤリハット事案
全体の件数でも92万件とその数は膨大で、
しかもその報告件数は前年比で3万件像と、かなりの増加傾向にあります。
事故に至っていないため報告の義務はない
基本的にヒヤリハット事案は事故に至ったものではありません。
ですので、本来的には報告の義務はなく、
これまでもそのような事案はなかったこととされてきました。
そして、もちろんそれは間違っているとは言えません。
今後の事故防止のための材料として
しかし、ヒヤリハット事案は、今後の事故防止の材料としてはかなり重要な報告になります。
というのもヒヤリハット事案は言い方を変えれば、事前に防げたという成功例という側面もあるのですから、
どうして直前で気づけたのか、という大切なデータの提供が期待できます。
また、同時にヒヤリハット事案は当然事故寸前の失敗でもあります。
その件数は実際の事故よりもかなり多くなりますから、
こういった事案の統計や研究は事故防止に大きなプラスであることは間違いありません。
現在は、ビックデータを元にした解析が主流ですから、大いなる資源と言えます。
ヒヤリハット事案の増加は報告数の増加
そんななか、ヒヤリハット事案の増加は実際には報告数の増加の側面が大きいと考えていいでしょう。
これは、医療関係者にヒヤリハット事案の重要性が浸透していることと、
どうじに、ヒヤリハット事案にとどまらない医療機関の透明性の拡大が大きな原因として存在します。
これまで、世間からはブラックボックス化していた医療現場。
このような透明化が進展していくことは今後の医療にとって大きな進歩と言えるでしょう。
ヒヤリハット事案の最大案件は薬剤
ではその内訳を見ておきましょう。
【内訳】
①薬剤29万2416件(全体の31.7%)
②療養上の世話20万3033件(全体の22.1%)
③ドレーン・チューブ13万5011件(全体の14.7%)
医療事故の撲滅に向けた透明性の確保
こういった調査に寄ってわかることはたくさんあります。
しかし、なによりも大切なことは、
こういった調査を実施することに寄って医療機関の透明性をあげていくということと言えます。
これまでは、その専門性やまたプライバシーの面から医療機関における透明性はなかなか向上しませんでした。
しかし、ヒヤリハット事案の報告件数が3万件と急増していることからも、
データとして医療事故を収集する大切さとともに透明性の重要度は間違いなく浸透してきています。
こういった積み重ねこそ、医療事故根絶への取り組みの第一歩。
当然こういったデータが医療機器業界にもいかされて大きなプラスとなるのは言うまでもないのです。
ISO13485:2016+QMS省令対応の品質マニュアルのお求めは、上の画像をクリックして下さい。