平成12年版厚生白書を見る


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IT革命前夜ミレニアムの日本、平成12年版厚生白書を見る

2000年というミレニアムな年です。

厚生白書は、翌年に厚生労働省へと変わる関係もあり、この歳が最後の観光となりました。

日本は、バブル崩壊以降の平成不況から容易には抜け出せない、
停滞感を感じながらも、この直後に迎えるIT革命による変化の前日と言った状況にありました。

21世紀を迎える直前の日本。

その姿を後世白書から見ていきましょう。

平成12年とは

ミレニアムを迎えた日本、この歳の日本は企業の不祥事と政治の混迷が目立った年でした。

バブルの後遺症とも言える、証券会社や銀行の合併が相次ぎ、
大手百貨店の倒産など、まだまだ不景気は続いているという状況でした。

大手食品会社の食中毒問題から発展した食品偽装があったのもこの年です。

また、この年の暮れには日本でインターネット博覧会が開催、
来たるべき情報化社会に向けて日本が踏み出しつつあった時代でもあります。

《政権》小渕恵三内閣、森喜朗内閣、第二次森喜朗内閣
《出版》柳美里『命』大平光代『だからあなたも生き抜いて』

全体的な傾向

この年の厚生白書の全体的な傾向、
それはまさに高齢化社会到来への警鐘です。

冒頭の序文に当たる『刊行にあたって』においても、
その文章の大部分は高齢化問題に割かれていて、当然ではありますがバブル期のお気楽さは感じられません。

また介護保険制度が始まったのもこの年。

高齢化社会の到来をにらみながら、そのうえで、そこにどう対処し、
同時にどのように国民への理解を得ることが出来るのかという論調が目立ちます。

また、この年を最後に厚生労働省とかわってしまうこともあり、
そのことについてもそれなりの分量が割かれていますが、本記事では触れません。

第1部 新しい高齢者像を求めて -21世紀の高齢社会を迎えるにあたって

ほぼ、この年の厚生白書の本編と位置づけて良い、第1部。
2~3部は、前年の厚生行政の動きについて述べる部分となっているため、
将来的なビジョンや今ある問題への意識などはすべてここに書かれていると考えて間違いありません。

それだけに、ここではやはり高齢者というものに関して、さらに数歩踏み込んだ認識が構築されています。

高齢者の多様化、地域格差、高齢者が属している世帯の違い、
子供との同居率、介護の必要の有無、生活環境、社会参加など、
高齢者と一口に言えない様々な側面に細かく切り込んでいくようになってきました。

そして、高齢者を21世紀型の高齢者とするには、という論旨で展開していきます。

しかし、ここに来てもまだ、負担増やサービスの低下を前提としない、
これまで通りにやっていくためにはどうしたら良いのかという基本姿勢が抜けていない感は否めません。

第2部 社会保障構造改革に向けた取組み

ここからは、前年度の取り組みが主眼になていきます。

その中でもやはりその主眼は高齢者問題であり、
特に前年に開始された介護保険制度に関しては大幅な情報の提示がなされています。

ただ、ここに来て国民年金の制度がかなり行き詰まっていることを認識し公表している点は抑えておくべきポイントです。

このあたりから、政治の世界でも年金というのがかなりビックイシューになってくることもあり、
その片鱗を感じさせる取組の内容が見て取れます。

この数年後、未納三兄弟などが取り沙汰され年金に対する信頼が失墜することも考えると、
ここで、年金への信頼を維持していくとしていることに感慨を感じます。

また、同時に少子化対策が触れられ始めているのも、大きなポイント。

これまでは高齢化が主なスポットでしたが、
高齢化と同時に少子化に関しても国が積極的に関わっていく必要が見えてきたなという感じがします。

また医療制度改革なども、やはり少子高齢化により財源の逼迫を中心に据えた内容。

ここから現在に至るまで、日本の厚生行政における中心的な問題として、
ずっと付きまとてくる問題だけに、ここでなんとかしておけば、という思いがないとは言えません。

第3部 健やかで安全な生活の確保

ここでまず注目したいのは、タバコです。

バブル期までの厚生白書でも、まったく触れられていなかったわけではないですが、
ここに来てかなり大きなポイントとしてタバコの危険性が触れられるようになってきました。

生活習慣病の対策の第2項目なのですから、かなり上位です。

また、女性の生き方についての項目もあり、社会の雰囲気が変わりつつあるのを感じますね。

さらに、インフルエンザ感染症対策、
ウラン事故への対策など社会情勢を反映したものも多数、
またここに来て、結核対策が再復活しているのも注目です。

ただ、医療機器開発や医薬品開発に関する項目が貧弱な感は否めません。

こういったところに長く続いた平成不況の影を感じざるを得ない状況です。

高齢化社会の問題の大きさが見え始めた頃

この頃は、ちょうど高齢化社会の問題の大きさが見え始めた頃です。

言い換えれば、
平均寿命が伸びたというニュースが良いニュース扱いでなくなってきた頃になります。

厚生白書にも、その影響は濃く感じられますね。

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