ISO 13485とISO 9001はどう違う?
品質規格と言うと、
「ISO 9001:2015 品質マネジメントシステム-要求事項」
を思い浮かべる人が多いと思います。
これは、ほとんどの製造業、サービス業で使用できる品質マネジメントシステムです。
品質マネジメントシステムとは、
製品の設計・開発、製造、保守サービスなどについて手順やルールを定めて、
一定の品質を満たした製品を安定して供給する仕組みのことです。
個々の製品を安定して作るためのシステムではありません。
あくまでも、
安定した品質の製品を作り出すためのシステムです。
要するに、
組織(主に会社、工場)のためのシステムです。
しかし、汎用性を持たせるために、
一部、曖昧なところがあります。
そのため、医療機器を作るためには適していない部分もあります。
それを医療機器向けに厳しい要求にした規格が
「ISO 13485:2016 医療機器における品質マネジメントシステムの国際規格」
です。
今回、規格について順番に説明しましょう。
ISO規格とは
ISOとは、スイスのジュネーブに本部を置く非政府機関 International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称です。
よく見ると「IOS」と略すようですが、
そうなりませんでした。
実は、その由来はハッキリしていません。
現在の説明として
- ISOという意味が「等しいこと」、「一様性」を示すギリシャ語の「ISOS(イソス)」からきたもので、多くの科学技術用語の中で使用されていること
- ISOという言葉は発音しやすく、前身の機関(ISA=万国規格統一協会)を知っている人たちは容易に連想が可能であること、などが根拠としてあげられています
ISOの主な活動は国際的に通用する規格を制定することであり、
ISOが制定した規格をISO規格といいます。
ISO規格は、国際的な取引をスムーズにするために、
何らかの製品やサービスに関して「世界中で同じ品質、同じレベルのものを提供できるようにしましょう」という国際的な基準です。
制定や改訂は日本を含む世界165ヵ国(2014年現在)の参加国の投票によって決まります。
(その前に議論はされます)
身近な例として、非常口のマーク(ISO 7010)やカードのサイズ(ISO/IEC 7810)、
ネジ(ISO 68)といったISO規格が挙げられます。
これらは製品そのものを対象とする、「モノ規格」です。
これらは、世界共通で決められていますから、
どこの国でも同じです。
それが、使用者にとって便利なわけです。
ISO 9001とは品質マネジメントシステムである
繰り返しますが、ISO 9001は、
組織のための規格です。
組織内の人々が同じ目的に向かって働いて(動いて)もらうためには、
「管理(マネジメント)」が必要不可欠です。
もし、2~3名の社員で構成されている会社なら、
社長が一人で管理できると思います。
社長は社員全員の顔を見ることができ、
社長が直接全体を管理することができるはずです。
この場合、マネジメントシステムは必要ありません。
しかし、社員が100人、1,000人となると、
社長1人で全体を管理することは不可能になります。
そこで会社としてのルールを作り、
それを皆で守ることによって、会社を運営していくことになります。
この会社を運営するためのルールが、「規定」や「手順」です。
さらに、規定や手順を運用するためには、部課長などの職制が必要となります。
その場合、各役職の「責任」と「権限」を明確にしなければなりません。
それが、マネジメントシステムです。
そのマネジメントシステムの中で、
特に製品やサービスの安定を狙ったシステムが、
ISO 9001です。
ですから、品質ではなく環境負荷の低減を目指した、
ISO 14001と言う規格もあります。
ISO 14001は、サステナビリティ(持続可能性)の考えのもと、
環境リスクの低減および環境への貢献を目指す環境マネジメントシステムの規格です。
さらに、例えば、ISO 27001は、
組織が保有する情報にかかわるさまざまなリスクを適切に管理するための
情報セキュリティマネジメントシステムの規格です。
あるいは、、ISO 22000(食品安全)やOHSAS 18001(労働安全衛生)といった規格もあります。
では、ISO 13485とは?
ISO 13485はISO 9001を医療機器の品質のために補強した規格
ISO 13485の目的は、世界中の医療機器法令の整合化を促進することであり、
顧客やら仕組みの改善といった事柄とは直接関係ありません。
ISO 9001をベースに、
医療機器の安全性や品質を確保するのに必要な要求事項が追加されています。
例えば
ISO13485には、医療機器特有の要求事項として、
- 要員の健康、清潔さ及び衣服
- 医療機器のバッチに対するトレーサビリティの確保
- 製品の洗浄性及び汚染管理
- 滅菌医療機器(注射器、メス、ピンセットなど)に対する固有の要求事項
- (能動)埋込み医療機器(ペースメーカー、人工内耳など)固有の要求事項
等々が規定されています。
ISO 13485 は、
医療機器メーカーが製造工程の有効性を確立し維持するための品質管理システムを構築る際に、
その助けとなることを意図して開発されました。
ISO 13485 に基づく品質マネジメントシステムを確立することで、
意図された目的において安全である医療機器の、
一貫性のある設計、開発、生産、設置、及び提供が確実となります。
一部の途上国では、
独自の法令を持たず、
このISO 13485を使って、
法令の代わりにしている場合もあります。
日本では、厚生労働省のQMSがありますから、
ISO 13485は、医療機器を製造販売する際、
絶対に必要という訳ではありません。
ISO13485を取得しなくても、
QMS省令に従って、
医療機器製造業を登録すれば、
医療機器の製造ができます。
あるいは、製造販売業許可を取得すれば
医療機器メーカーとして、
医療機器の販売もできます。
(この辺はまた、次の機会に詳しく書きます)
ですから、早く費用も安く医療機器の製造販売を始めたければ、
ISO13485は無視することもできます。
まとめ
ISO 13485は医療の安全性というものが根底にあるということ。
ISO 13485を取得すると、ビジネスの範囲が国際的になります。
世界を相手にしやすいのです。
ISO 13485 認証は、市場での競争力拡大に役立ちます。
また、ISO 13485 認証を取得することで、
企業は、顧客や規制当局に品質に対する責任を示すことができます。
これは、とても有利です。
ですから、優れた技術力で医療機器を新たに作るつもりなら、
ISO 13485の取得は視野に入れた方がよいのです。
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