医療現場でのニーズ、最先端技術だけがその主力ではない
医療機器のニーズとしてまず浮かぶのは、高度な最先端技術です。
AIの活用やIOT技術、
高度デジタル処理のできるプログラムなどを始めとした情報機器から高い技術力や高品質の加工機械の必要な精密機器まで、
そのニーズの殆どはこう言う特殊な分野だと思わてています。
しかし、実際はどうでしょうか?
実は医療の現場で求められているものは、
そういった特殊で高度な技術ばかりではありません。
それこそが、いわゆる現場におけるニーズというものなのです。
高度先端医療機器はもちろん必要
まずはじめに断っておくと、高度先端医療機器は当然必要です。
高度先端医療機器だけではなく、
より軽く、より薄く、より小さくと言った高い技術力におらづけされた精密機器などもやはり間違いなく必要とはされています。
それは間違いありません。
しかし、私達が思っているほども、
それだけが医療機器として求められているものではないということなのです。
実際、医療の現場で求められているのはもっとローテクなもの。
しかも、そのローテクによって今まで仕方がないとされていたものの革新こそが最も求められているものなのです。
ありふれた医療機器にも革新は必要
医療機器の革新はありふれたものにこそ必要なのです。
①改良が放置されている様々な医療機器
例えば、医療用ベッド。
どんな病院に行ってもたいてい同じベッドが使用されていて、
それこそ一般の入院病棟に置かれているベッドなどは、
一体いつからこの形なんだろうと思うほどモデルチェンジがなされていません。
他にも、病院の中には昔と変わらないものがたくさんありますよね。
それこそ点滴用の器具一式などは、
昭和の頃と全く変わらないようなものを患者さんが手に持って歩いている姿をいまでも見ることができます。
血圧計なども、そうですよね。
こういった、どちらかというとアナログな文屋にこそ、実は新しい医療機器のフロンティアがあるのです。
②当たり前にどう挑むのか
例えば、かつて注射は痛いものでした。
それは、当たり前のことで、注射の痛みに関しては注射される側の患者が我慢するべきもので、
あとは意志の技術によってより痛くないように指すことが重要でした。
しかし、いま、痛くない注射針というものが開発されることでその当たり前は変化しています。
そこには、例えば蚊の口の構造を真似て作ったなどというなかなか面白い話はありますが、
大事なことはそこではなく注射の針は痛いものだという常識からの脱却です。
もちろんこれはどちらかといえば精密な技術に属するものです。
しかし、この当たり前をどうクリアしていくのかという観点は、
医療機器のイノベーションにおいて重要なことであるのは間違いないことです。
③評価された心電図電極
2019年4月9日に文部科学大臣表彰・科学技術賞が発表されました。
そこで受賞されたものの中にアイ・メディックスというメーカーの製造した
「ディスポーサブル生体電極の開発」というこれまであまり受賞例のなかった医療機器分野での開発研究が含まれていたのです。
言葉だけを聞けば、これはなにか高度なにかのような気がします。
しかし、これをわかりやすく言えば心電図用の使い捨て電極の開発、となるのです。
そう、みなさんが健康診断などで一度は使ったことのなる、
あの体に貼り付ける心電図用の電極の開発であり、しかも開発の中心は電極部分ですらありません。
それは、接着面。改善点はかぶれだったのです。
④かぶれない心電図用電極という着想
従来心電図モニターの電極、特に使い捨てのものに関しては新技術の開発などだれも考えていませんでした。
そう、つまりそれはそういうもので当たり前だったんですね。
そしてその当たり前の中に、長時間電極を身体に貼っていると貼っている部分がかぶれてしまうというデメリットがあったのですが、
それもまた当たり前のそういうものだという認識だったわけです。
しかし、アイ・メディックスはその当たり前をクリアしたわけです。
細かい説明は省きますが、新素材などを使うことによって、
密着していながら空気を透過するという相反するはずの2つの性質を備えた心電図用使い捨て電極を開発。
これによって、かぶれにくい心電図用電極は出来上がったというわけです。
医療機器は特別であり特別ではない
医療機器というのは他の製造業の分野から見れば特別な分野です。
しかし、それはあくまでその使用目的に由来する様々な規制や、
それから派生することで生まれる単価の高さという点においてそうなのであって、使うのは人間です。
そこには、気づきにくいニッチなニーズや隙間産業的な着眼点はきっとあります。
決してAIやIOTのようなテクノロジーを使わないものであっても、
心電図の電極でかぶれなければきっと喜ばれるという一つの着眼点が実を結ぶこともあるのです。
そしてそれはすべての産業における共通の着眼点だと言っていいでしょう。
全く新しいアイディアというものは、
なかなかありません。
世の中の新しいアイディアは、これまでに存在したものの新しい組み合わせです。
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