ハーボニー偽造品問題、医療の安全性を考える①
2017年1月、奈良県でC型肝炎治療薬『ハーボニー』の偽物が発見されました。
「ハーボニー」は、1人当たり460万円かかる高額なC型肝炎治療薬です。
これまで、個人輸入などの経路から偽薬が問題になったことはあったものの、
この事件では、正規の薬局で購入した処方薬に偽装品が混入するという前代未聞の事件です。
その出来事が医薬品業界に投げかけた波紋は大きなものでした。
そこで、この事件について2回にわたってせまってみたいと思います。
ハーボニー偽造品事件、試験の経緯
ではまず事件の経緯から見ていきましょう。
正規薬局の処方薬として発見される
発端は2017年1月10日、
奈良県内の正規の調剤薬局で処方されたハーボニーが偽薬であったことで発覚します。
発覚の経緯は、これまでハーボニーを処方されていた患者による通報で、
薬局としても正規品を販売していると思っていたため製造販売元のギリアド・サイエンシスに問い合わせたのです。
また、当該薬局はチェーンであったため、全店舗の在庫を点検しました。
その結果、発覚の原因となった1本と合わせて計5本の偽造品が発見され、
うち1本は偽物のラベルが添付されていたことが分かったのです。
偽造製品は日本中に
これを機に、全国でハーボニーのチェックが行われました。
その結果、ハーボニーの偽物は調教での9本を合わせて、
これまで15本の偽造品が発見され、その影響は全国に及びました。
それを受けて、警察は捜査を開始。
結果、現在犯人グループのメンバーと思しき人間が逮捕されていますが、
偽造品の中味はビタミン剤や漢方薬、別の肝炎治療薬や本物のハーボニーだったことが判明。
真相の究明が進められています。
医薬品界に与えた衝撃
これまで厚生労働省は正規の薬局で販売されている医薬品に偽物は存在しないとしていました。
たしかに、個人雄乳や通信販売などの方法で手に入れた薬の中には偽薬品は時々存在しており、
厚生棟同省も注意喚起を行っていました。
しかし、今回の事件でその前提は崩れ去ったのです。
しかも、日本の医療業界は、この薬品の不正流通に関してかなり厳しい制度を取っており、
その万全性に自信を持ってたのです。
それは日本の医薬品市場にとっても大きなインパクトでした。
これまで築き上げてきた、または気付きあげてきた神話が崩れた衝撃は計り知れないものでした。
事件の背景に見える現金問屋の存在。
事件の背景に関わっていたもの、それは現金問屋といわれる存在です。
正規ルート以外からの購入
今回、偽造品の販売が発覚したチェーンの薬局は正規の販売薬局です。
しかし、そのチェーンがハーボニーを購入していた卸薬局の中に、
ハーボニーと正式な契約をしている正規の業者ではない業者があったというわけなんですね。
その点において、チェーンの薬局に落ち度がなかったとは言えません。
正規のルートで購入しておけば何も問題はなかったのですから、
それは間違いないのですが、問題はその正規ではないルートの卸薬局が非正規な薬局ではないということ。
そこに問題があったのです。
現金問屋という正規の業者
ハーボニーを製造販売するギリアド・サイエンシスという会社、
この会社と契約を交わしているのが正規のルート。
しかし、今回この偽造薬品事件にかかわった卸薬局は、この正規ルートではないものの、
きちんと医薬品販売の認可を得ている正規の販売店だったわけです。
つまり、正規のルートではないが不正規の店ではないということ。
そして、その卸薬局が「現金問屋」と言われる、
医薬品の世界に存在する特異な営業形態の販売店だったわけです。
現金問屋の実態
現金問屋とは、簡単に言うと薬の転売屋です。
医療機関や薬局から余った医薬品を買い取り、
そしてそれを転売するという形式の営業をしている卸業者になるのですが、
これは実は違法でも何でもありません。
むしろ、業界において便利でありがたい存在として認知されていたものです。
たしかに、一方で不要な薬品が他方で必要とされていて、
その橋わたしとなるのであれば、これはありがたい業態と言えるでしょう。
じっさい「医薬品 買取」と検索すれば、
そういうお店はたくさん出てきます、違法ではないので当然です。
薬品の不正売買の温床となりうる
しかし、一方この現金問屋は薬品の不正売買の温床ともなり得ます。
これまでも、所得隠しや医薬品の横流し、
個人による生活保護の不正受給などの一翼を担うことがあったため、
これまでも注目される機会はありました。
しかし、今回はここを中継して偽造薬品が正規薬局で販売されるという結果になったのです。
今後こう言った業態の在り方は常に問われていくでしょう。
薬局の担う責任について
薬局の経営が、常に順調ではないことは周知です。
特に最近は大手ドラッグストアとの過当競争の中で、多くの薬局が苦境を強いられているのはご存知の通りだといっていいでしょう。
そんな時、不要の薬品を買い取り、
必要な薬品を格安で販売してくれる現金問屋の存在はありがたくもあります。
しかし、そこには、薬局の薬品を販売する責任というのが大きく存在していることをわすれてはいけません。
この、ハーボニーの一件はそこに一つの問題敵をしているといってもいいでしょう。
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