COVID-19
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アビガンとコロナの関係から、薬事行政の難しさを考える
緊急事態宣言も解除され、やっと一息ついたかに見えたコロナ禍。
しかし、最近では再びPCR検査陽性者の数が増え、
東京や大阪でも過去最高を記録するという事態になっています。
マスコミは、嬉しそうに大騒ぎです。
もちろんそれで、2~3月の状態より悪化しているとはいい切れません。
陽性反応は増えたものの、PCR検査を受ける人間もまた増えていますし、
重症率含めてさらなる検証が待たれるところです。
(重傷者数はピーク時の1/5~1/6ぐらいに減っています)
そんなか、注目を浴びたのがアビガンの効果に疑問を投げかける報道。
一時はコロナの救世主とまで言われたアビガン、
そんなアビガンの動向から薬事行政の難しさに迫っていきます。
アビガンのコレまでの流れ
コロナの治療薬として注目を浴びたアビガン。
コレまでのその傾向についておさらいしておきます。
抗インフルエンザウイルス薬『アビガン』
アビガン(ファビピラビル)はもともと抗インフルエンザウイルス薬として開発された薬剤です。
しかし、アビガンは抗インフルエンザ薬としての効果はさほど高くなく、
また、妊婦だけでなく男性にも生殖に関わる副作用が認められるため、あまり脚光を浴びるクスリではありませんでした。
そのため、タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタなどが効かなかった場合に使用がされると言うくらいです。
つまり、本来の目的としては不遇な薬だったと言えます。
コロナ流行とレムデシビル
コロナ流行とともに注目されたもう一つの薬、それがレムデシビルです。
レムデシビルはもともと抗エボラウイルス薬として開発された薬で、
これがコロナウイルスの増殖抑制に一定の効果が見られることがまず判明しました。
そこで、注目されたのがアビガン。
というのもアビガンとレムデシビルは、
インフルエンザとエボラという違いはあってもそのRNAポリメラーゼを阻害するという作用が似通っているからです。
ここで、いきなりアビガンが脚光をあびます。
アビガンへの期待と政府の後押し
アビガンへの期待が高まると、試験的な投与が始まります。
その結果、中国や日本国内の患者において速やかな体温の定価と血中酸素の改善が見られ、
ウイルスの早期陰性化に対して効果が現れたという報告が数件寄せられます。
これを受け安倍総理は4月7日の会見でアビガンに症状改善に効果があったと発表、
一気にアビガン承認へ傾きました。
安倍総理の会見では5月中に新型コロナ感染症治療薬としての承認を目指す方針が発表され、
コロナウイルスの蔓延という自体の中で、前のめりにアビガンの承認に動き始めます。
しかも正式な治験ではなく、
観察研究を根拠とした承認という強硬策とも言える方向性でした。
中間報告とマスコミと政治
5月中の承認に向けて前のめりな政府。
しかし、アビガン研究観察の中間解析を受け専門家により「時期尚早」という結果が発表されると、
その方針は沈静化します。
ところが、ここで台頭してきたのがマスコミ。
アビガンの有用性を伝える報告と、その後の政府の前のめりな姿勢に期待感を持っていたマスコミは、
この政府のトーンダウンに一斉に反発を強めていきます。
更には一部地方自治体の長、
そして政党にアビガン承認が遅れることへの痛切な批判が相次いだことも事実です。
つまり何時もの「阿部がー!」となる訳です。
まあ、雨が降るのも「阿部が悪い」と考える人もいますから、
これも仕方がないかもしれません。
藤田医科大の報告とアビガン騒動の沈静化
そんななか、7月10日に藤田医科大によってアビガンの有用性に対する中間報告がまとめられます。
これは、国内47の医療機関で行われた計89人の患者に対するもので、
細かい数値は省くとして、アビガン投与を受けた患者とそうでない患者の相対的優位性が認められなかったという結果でした。
藤田医科大学が発表した記事には「通常投与群では遅延投与群に比べ6日までにウイルスの消失や解熱に至りやすい傾向が見られたものの、統計的有意差には達しませんでした。」とあります。
もちろん、コレは最終結果ではないにせよ、この報告のインパクトは小さくありません。
これにより、マスコミのアビガン推進報道も影を潜め、アビガン騒動は沈静化したと言っていいでしょう。
アビガンにまつわる流れは適切だったのか
コロナ禍におけるアビガンの流れ。
緊急事態のさなかであったとは言え、それは危険な流れであったと言えなくもありません。
アビガン承認への期待と拙速な流れに理解は出来る
今回、その背景にあるのは世界的なコロナウイルスの流行。
その流行は、かつて人類が経験したこともないような莫大なもので、
それにより社会の様相が一変するようなものであったことは、いまさら言うまでもないことです。
また、検査はできても治療の方法がないという状況も追い打ちでしたし、それによる医療崩壊も深刻でした。
そう、まさにわらを持つかむ状況ではあったのです。
その中で、ほんの少しでも可能性を感じられるアビガンへの期待。
コレに、理解できないとは言えません。
マスコミの煽りと政争の具
また、アビガンに関してはマスコミの煽りと政争の具にしようとする政治家にも問題があったと言えます。
個別の名前は差し控えますが、政権批判にアビガン承認の遅さを引き合いに出したり、
厚生労働省が意図的に使用制限を出しているなどの主張が一部政党からあったのは事実です。
特に酷かったのは、テレビのコメンテーター達です。
また、マスコミもまた、政権批判の勢いと相まってアビガン承認の遅さを専門家の口から語らせるようになる。
こうした状況から、国民の中にもアビガンを求める声が高まり、
政府はそれへの対応を迫られるという形になったのは事実です。
また、一部地方自治体の長も、アビガンに対して前のめりであったのも記憶に新しいところです。
医薬品という事実を忘れていなかったか
そもそも、アビガンは副作用を強く懸念される薬です。
また、冒頭にも述べたように抗インフルエンザウイルス薬としても、
有用性をしっかりと確認できなかった薬でもあります。
確かに、アビガンに一定の効果を感じた症例はあったのでしょう。
しかし、その後の流れは、まるでそれが医薬品であることを忘れてしまったかの如き流れであると言ってもよいほどで、
少なくとも政府がブレーキを掛けるまで危ない状況であったことは否めません。
もちろん、最終的な評価は今後の状況を待つ必要があります。
しかし、一歩間違えばという状況にあったことは忘れるべきではないでしょう。
経験を得たということはプラス
今回、アビガンに関しては一定の沈静化を見て冷静さは戻ったと言えます。
しかし、今後また同じような自体が起こった時、
もしくはワクチンや特効薬の開発が遅れた状態で第2波3波を迎えた時、同じ事態に陥らないとは限りません。
次はアビガンではない可能性もあります。
ただ、今回の件で日本国はその『危ない経験』をしました。
この経験を生かしてこそ、今後のコロナ対策の安全性は高まると言えるでしょう。
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