2018年版医療白書を読む AIの進展で医師の働き方はどう変わるか


COVID-19
COVID-19 に関する最新の情報は内閣官房ホームページをご参照ください

2018年版医療白書を読む 第1部第2編第3章『AIの進展で医師の働き方はどう変わるか』

AIが活躍する世界で社会はどう変容するのか。

レイ・カーツワイルによって「シンギュラリティは近い」と発信された2005年からすでに16年という月日がたった今、
かつてAIに取って代わられる職業リストが流行ったことが嘘のようにAIは脅威からベストパートナーへと印象が変貌しています。

そんな中、2018年の医療白書で論述された医療界におけるAIの進展。

もちろん、本章も医療界への重要な提言の含まれるものですが、
読み物として面白い章となっています。

総論としての傾向

本章は木村通夫(浜松医科大学教授)によって論述されています。

内容としては、AIの発展とそのブームを紹介した上で、
そのAIが医療界においてどんな活躍と変容をもたらすのかといった内容。

AIが医療において用いられようとする試行錯誤を世代として認識した解説。

そして、その結果がもたらしたもの、
またその結果から見える未来の展望。

そのどれもがしっかりとした論理の上にあり、
また、少し皮肉の効いた文章であるせいなのか非常に面白い章となっています。

医療におけるAIの変遷

本章では医療におけるAIの変遷を世代に分けて解説。

AIによって医療現場はどう変わってきたのか、
もしくはどう変わろうとしてきたのかがわかりやすくまとめられています。

医療界におけるAIの変遷

1970年代の電子計算機による効率化を1世代として始まるAIの変遷。

計算の効率化から論理を扱い判断にさえいたろうとした第2世代、
判断を保留し画像処理や画像認識の工場によってAIの進展とは言い切れないものの擬似的にそうであった2.5世代。

そして、ディープラーニングによって人間を越えようとするAIの進歩を見つめた第3世代。

これらAIの進歩と医療における現状を見て、現実問題をしっかりと見据えています。

一見AIに否定的に見える世代説明

本章における、このAIの進化を読むに、著者はAIに否定的な立場であるかのように見えます。

第3世代、ディープラーニングによって乱数の果に導き出される結果を「易学(疫学ではありません)」
つまり占いのようなものだと断じるあたり、その傾向は強く感じられます。

しかし、それはある意味医師としての良心に関わる部分。

最終的にAIのなすことを易学と例えたのは「理由はよくわからないけれどこういう結果となりました」という、
いわゆる理由の説明できないAI特有の問題への提起です。

そして、それを患者に告げる医師の責任においての発言なのです。

ビッグデータの利用と一言に言うものの

AIの利用、といえば今ではビッグデータの利用というのが一つの大きなトピック。

現実的に、相当先進的な分野でない限り、AIによる判断をもってなにかを進めていく、
またそれに主体を委ねるというような利用されてはいません。

現在AIの主な利用範囲は、
データ収集と管理、選別とそれによる可能性の提示。

つまりいわゆるビックデータ利用に関することですが、
これについて2018年段階で疑義を提示しているのです。

医療データのノイズ

この観点はかなり新鮮でした。

つまり、医療データを一元化し、ビックデータとして利用するという容易に考えつくもののなかなか、
運用に至らないその裏にデータのノイズが有るというのです。

例えばデータコードの一元化が未だ不十分であること。

病名が正確に記載されていなかったり、事実に即していなかったり。

また、カルテに必ずしも真実が書かれているわけではないことなど、
言われてみれば納得の行くことばかり。

ビッグデータ化が難しいのも自明だと感じさせられます。

ビッグデータを意識した医師のあり方

ビッグデータを利用するためには、
医師は「情報の収集を行う人間」でなければいけないという著者の観点です。

インタビュー能力をつけるべきだという形で書かれていますが、
この、医師は情報を聞き出すことにきちんとした意識があるべきだという指摘は非常に面白い指摘です。

自分だけではなく、データとして「生きた情報」をキチンと受け取る能力。

確かにこれからの医師に必要な能力でしょう。

AIは医師に取って代わるのか

最後に、AIが医師に取って代わるのかといういわゆるシンギュラリティ的観点のはなし。

ここで面白かったのは、医師や薬剤師はその心配をしていても、
その一方で看護師はまったくその心配をしていないという点です。

それは、看護師は常に患者の個性と向き合っているからだ、と言います。

著者いわく「個性とは創造性であり、AIが不得意とする所」だといいます。

そして、このマニュアル化された社会において個性とは失敗に現れるもので、
その失敗とは病気にほかならないとも言うのです。

つまり、それは患者に近ければ近いほどAIに取って代わられる心配がないということなのだと。

今後、AIによる医療が社会に登場し席巻していくことが予想される世界において、
この言葉の持つ重みは大きく、また医療界の今後への大きな提言であると言えるでしょう。

品質マニュアル

ISO13485:2016+QMS省令対応の品質マニュアルのお求めは、上の画像をクリックして下さい。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

上部へスクロール