品質マニュアルを作り終えた企業が、次につまずくのが手順書です。
「何種類作ればよいのか」「どこまで細かく書くのか」「自社に不要なものはどう判断するのか」——実際の工数は、マニュアル本体より手順書のほうが圧倒的に大きくなります。
この記事では、QMS省令とISO13485で必要になる手順書を整理し、作成の順序をお伝えします。
手順書は「誰が・いつ・何をするか」を書く文書
先に、品質マニュアルとの役割の違いを整理します。
| 文書 | 書く内容 | 分量の目安 |
|---|---|---|
| 品質マニュアル | QMS全体の構造。どの要求事項を、どの手順書で実施するか | 1冊・40〜50ページ |
| 手順書 | 誰が・いつ・何を・どうするか。実際の業務のやり方 | プロセスごとに1冊 |
| 記録様式 | 手順に沿って業務を行った証跡を残す書式 | 手順書ごとに複数 |
品質マニュアルが地図なら、手順書は道順、記録様式は足跡です。
前回の記事ISO13485の品質マニュアルの作り方でも触れたとおり、マニュアルに作業手順まで書き込むと、改訂のたびに全体を直すことになります。役割を分けておくことが、長く運用するうえで効いてきます。
QMS省令で求められる主な手順書
QMS省令とISO13485は要求事項の大枠が共通しているため、一つの文書体系で両方に対応させるのが実務上は効率的です。
必要になる手順書は、おおむね次のように整理できます。
文書・記録の管理
- 文書管理手順書
- 記録管理手順書
すべての土台になる文書です。ここが固まらないと、他の手順書の番号体系や改訂ルールが決まりません。最初に作るべきものです。
経営・組織
- 管理監督者の責任と権限に関する手順書
- マネジメントレビュー手順書
- 教育訓練手順書
- 内部監査手順書
製品実現
- 設計開発管理手順書(設計を行う場合)
- 購買管理手順書
- 製造管理手順書
- 工程管理・作業環境管理手順書
- 識別・トレーサビリティ管理手順書
- 検査・試験手順書
- 校正管理手順書
市販後・改善
- 苦情処理手順書
- 不具合報告手順書
- 是正処置・予防処置手順書
- 回収処理手順書
- データ分析手順書
このほか、滅菌医療機器を扱う場合の滅菌工程管理、無菌性の維持に関する手順書など、製品の特性に応じて追加が必要になります。
全体では100種類を超える文書(手順書+記録様式)になるのが一般的です。
自社に不要な手順書をどう見極めるか
上の一覧を見て、「こんなに作れない」と感じられたかもしれません。
しかし、すべての企業がすべての手順書を必要とするわけではありません。
| 事業形態 | 不要になりやすい手順書 |
|---|---|
| 輸入販売のみ | 製造管理、工程管理、作業環境管理 |
| 設計・開発を行わない | 設計開発管理(ただし除外の正当性を説明する必要あり) |
| 滅菌製品を扱わない | 滅菌工程管理、無菌性維持 |
| 製造を全部委託 | 自社の製造手順(ただし委託先の管理手順は必要) |
判断の基準は、「自社がその業務を行うかどうか」です。行わない業務の手順書は不要ですが、品質マニュアルで適用範囲から除外し、その理由を説明する必要があります。
ここを曖昧にしたまま手順書だけ削ると、調査で指摘を受けます。適用範囲の考え方についてはQMS適合性調査とはもあわせてご覧ください。
作成の順序
手順書は、次の順序で作ると手戻りが少なくなります。
① 文書管理・記録管理
文書番号の付け方、改訂の記録方法、承認者を決めます。ここが後から変わると、全文書の書き直しになります。
② 組織・責任と権限
薬事三役を含む体制を確定させます。手順書の中で「誰が承認するか」を書くため、組織が固まっていないと先に進めません。
③ 実業務のプロセス
製造、購買、検査など、実際に行っている業務を手順書に落とします。理想の手順ではなく、現に行っていることを書くのが原則です。
④ 市販後の対応
苦情処理、不具合報告、回収。発生頻度は低いものの、いざというとき動けなければ意味がありません。手順と連絡経路を明確にしておきます。
⑤ 改善のサイクル
内部監査、是正処置、マネジメントレビュー。QMSを回し続けるための仕組みです。
つまずきやすい点
書きすぎて運用できなくなる
詳細に書くほど良い手順書だと考えて、細かく規定しすぎるケースです。手順書に書いたことは、そのとおりに実施し、記録を残す義務が生じます。守れない手順を書けば、調査で「手順どおりに行われていない」と指摘されます。
現場が読まない文書になる
手順書は、実際に作業する人が読むものです。規格の用語をそのまま使うと、現場では通じません。社内で使っている言葉に置き換えるほうが、結果的に運用されます。
記録様式を後回しにする
手順書だけ作って記録様式を用意しないと、業務を行った証跡が残りません。手順書と記録様式はセットで作るのが鉄則です。
まとめ
- 手順書は「誰が・いつ・何を・どうするか」を書く文書。品質マニュアルとは役割が違う
- QMS省令・ISO13485に対応するには、記録様式を含めて100種類を超える文書が必要になる
- ただし自社が行わない業務の手順書は不要。適用範囲で除外し、理由を説明する
- 作成順は「文書管理 → 組織 → 実業務 → 市販後 → 改善」
- 書きすぎない。守れる手順を書く
ゼロから100種類以上の文書を用意するには、相当な期間がかかります。ひな形を出発点にすれば、自社の実態に合わせる作業に集中できます。ご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。
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