ISO13485の品質マニュアルの作り方|記載項目と作成手順を解説

医療機器の製造販売業や製造業に参入するにあたって、最初の関門になるのが品質マニュアルの作成です。

「何をどこまで書けばよいのか分からない」「規格書を読んでも抽象的で、自社の場合にどう落とし込めばいいのか見えてこない」——ご相談をいただく際、最も多いのがこの2つです。

この記事では、ISO13485とQMS省令が求める品質マニュアルの記載項目と、実際の作成手順を整理します。

品質マニュアルは「文書の地図」である

先に結論をお伝えします。品質マニュアルとは、品質マネジメントシステム全体の見取り図です。

細かい作業手順を書くものではありません。それは手順書の役割です。品質マニュアルが担うのは、「自社の品質管理の仕組みはこういう構造になっている」と示すことです。

ISO13485:2016では、4.2.2で品質マニュアルに次の3つを含めることを求めています。

項目 内容
適用範囲 品質マネジメントシステムがどこまでを対象とするか。除外・非適用がある場合は、その詳細と正当性
手順書への参照 品質マネジメントシステムのために作成した手順書、またはその参照先
プロセス間の相互関係 各プロセスがどう関連し合っているかの記述

加えて、品質マネジメントシステムで使用する文書の構造の概要を記載することも求められています。

つまり品質マニュアルは、それ単体で完結する文書ではなく、手順書・記録様式へと読み手を導く入口です。ここを取り違えて、作業手順まで全部書き込もうとすると、膨大な量になったうえに改訂が追いつかなくなります。

記載すべき項目

規格の要求を踏まえると、実務上は次の構成が標準的です。

  1. 適用範囲(対象となる製品・事業所・除外項目とその理由)
  2. 引用規格・用語の定義
  3. 組織の概要と品質方針・品質目標
  4. 品質マネジメントシステムの構成(プロセスの相互関係図)
  5. 文書体系の概要(マニュアル・手順書・記録様式の階層)
  6. 各要求事項への対応(規格の4章〜8章に沿って、自社が何をどの手順書で実施するか)
  7. 責任と権限(薬事三役を含む組織体制)

このうち4と5が品質マニュアルの中核です。審査でも、ここが自社の実態と合っているかが見られます。

なお、国内で製造販売業許可を取得する場合は、ISO13485だけでなくQMS省令への対応も必要です。両者は要求事項の大枠が共通しているため、一つの文書体系で両方に対応させるのが実務上は効率的です。詳しくはQMS省令とは? 医療機器製造販売に欠かせない知識をご覧ください。

作成の5ステップ

Step 1:適用範囲を決める

自社が何を、どこで、どこまで行うのかを確定させます。設計・開発を行わない場合は除外できますが、除外には正当な理由の説明が必要です。ここが曖昧なまま先に進むと、後の全工程がぶれます。

Step 2:現状のプロセスを洗い出す

規格に合わせて新しい仕組みを作るのではなく、すでに社内で行っていることを書き出すのが先です。受注から出荷までの流れ、誰が何を判断しているか、どんな記録が残っているか。

Step 3:規格の要求事項と突き合わせる

洗い出した現状と、規格の4章〜8章の要求事項を照合します。ここで「やっているが記録がない」「そもそもやっていない」項目が見つかります。

Step 4:文書体系を設計する

品質マニュアル(1冊)→ 手順書(プロセスごと)→ 記録様式、の3階層で組むのが一般的です。この段階で手順書の一覧を決めてしまうと、マニュアル本体の記述が固まります。

Step 5:品質マニュアルを執筆する

Step 4までが終わっていれば、執筆自体は難しくありません。各要求事項に対して「自社は○○手順書に従って実施する」と対応関係を示していきます。

文書番号の付け方や改訂の管理方法は、ISO13485 品質マニュアルを理解する:文書管理で解説しています。

自作でつまずきやすい3つのポイント

当社の文書セットを開発した菊地孝仁は、医療機器メーカーの工場管理者を20年以上務めてきました。その経験から見ても、また現在ご相談を受ける中でも、多くの企業が同じところで止まっています。

① 規格の文言をそのまま書き写してしまう

「組織は〜しなければならない」という規格の表現を転記しただけでは、自社が何をするのかが書かれていません。審査で必ず指摘されます。主語を自社に置き換え、実際に誰が何をするのかを書く必要があります。

② 文書量が膨れ上がる

手順書に書くべき内容までマニュアルに入れてしまうケースです。分量が増えるほど改訂の手間が増え、結果として実態と乖離した文書になっていきます。運用できない文書は、あってもマイナスにしかなりません。

③ 実態と合っていない

理想的な仕組みを書いてしまい、現場が守れない。これが最も多い失敗です。品質マニュアルは審査を通すための作文ではなく、日々の業務の拠り所です。まず現状を書き、足りないところを段階的に埋めていくほうが、結果的に早く整います。

記録の残し方についてはISO13485 品質マニュアルを理解する:記録の管理もあわせてご覧ください。

まとめ

品質マニュアルの作成は、次の順序で進めます。

  • 適用範囲を確定する
  • 現状のプロセスを先に洗い出す(規格に合わせて作らない)
  • 規格の要求事項と突き合わせ、不足を洗い出す
  • 文書体系(マニュアル→手順書→記録)を設計する
  • 対応関係を示す形で執筆する

ゼロから作る場合、ここまでで数か月を要することも珍しくありません。ひな形をベースに自社の実態を反映させていくほうが、工数を大幅に削減できます。

作成にあたってご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。

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参考リンク(一次情報)

本記事の内容は、以下の法令・公的機関の情報に基づいています。制度は改正されることがあるため、実務では必ず最新の条文・通知をご確認ください。

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