幹細胞を使った治療を始めたい医療機関や、細胞の培養を受託したい企業から、最初に出てくる疑問が「培養するのに何の許可が要るのか」です。
医療機器や医薬品の製造と違い、治療に使う細胞の培養は再生医療等の安全性の確保等に関する法律(以下、再生医療等安全性確保法)が中心になります。さらに、同じ細胞でも薬機法の「再生医療等製品」として扱うルートもあり、どちらの法律の話なのかを取り違えると手続きを誤ります。この記事では、幹細胞培養に必要な許可・届出を、条文と厚生労働省の資料をもとに整理します。
結論:培養する「場所」と「実施者」で許可か届出かが決まる
再生医療等安全性確保法では、治療に使う細胞を培養する施設を「特定細胞加工物等製造施設」(いわゆる細胞培養加工施設)と呼び、手続きを「届出」「許可」「認定」の3種類に分けています。
| 培養する施設 | 手続き | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 病院・診療所に設置された施設 | 厚生労働大臣への届出 | 第40条 |
| 薬機法の製造業許可(第13条第1項または第23条の22第1項)を受けた製造所 | 厚生労働大臣への届出 | 第40条 |
| 上記以外の施設(企業などの外部施設) | 厚生労働大臣の許可 | 第35条 |
| 外国にある施設 | 厚生労働大臣の認定 | 第39条 |
厚生労働省の資料では、許可と届出の窓口は地方厚生局とされています。
ここで押さえたいのは、治療の内容ではなく「誰が、どこで培養するか」で区分が決まるという点です。同じ幹細胞の培養でも、クリニック内の施設なら届出、培養を受託する企業の施設なら許可になります。
許可の場合:5年ごとの更新とPMDAの調査がある
外部の施設で培養する場合の許可には、有効期間があります。法第36条は「三年を下らない政令で定める期間ごとにその更新を受けなければ…その効力を失う」と定め、施行令第5条でその期間を5年としています。医療機器の業許可と同じく、法律と施行令をセットで読む構造です。
許可にあたっては、施設の構造設備が法第42条に基づく厚生労働省令の基準に適合しているかについて、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の調査があります。PMDAに納める調査手数料は施行令第9条に定められています。
| 区分 | 実地調査あり | 実地調査なし |
|---|---|---|
| 新規の許可 | 144,000円 | 98,200円 |
| 許可の更新 | 97,100円 | 48,600円 |
このほか、厚生労働省の資料では許可の申請に登録免許税(1件9万円)がかかるとされています。また同資料では、調査の申請は許可を受けたい日(更新の場合は有効期間の満了日)の5か月前までに行うよう案内されています。更新を失念すると許可は失効するため、満了日から逆算した管理が欠かせません。
許可・届出のいずれの施設も、法第44条に基づき厚生労働省令で定められた、製造・品質管理の方法、試験検査、保管・輸送の方法などの遵守事項を守る必要があります。
治療を提供する側には別の手続きがある
見落とされやすいのが、培養施設の手続きと、治療を提供する医療機関の手続きは別物だという点です。
培養施設の届出・許可を済ませても、その細胞を使った治療を提供するには、医療機関が再生医療等提供計画を提出する必要があります(法第4条)。逆に、医療機関が培養を外部に委託する場合は、委託先は許可または届出を済ませた特定細胞加工物等製造事業者でなければなりません(法第12条)。治療はリスクに応じて第一種・第二種・第三種に分類され、厚生労働省の分類フローでは、幹細胞を培養して用いる治療は原則として第二種です。ただし、ES細胞・iPS細胞、他人の細胞、遺伝子を導入した細胞などを使う場合は第一種になります。
| 区分 | 審査する委員会 | 提出先 |
|---|---|---|
| 第一種 | 特定認定再生医療等委員会(法第7条) | 厚生労働大臣(地方厚生局経由) |
| 第二種 | 特定認定再生医療等委員会(法第11条) | 厚生労働大臣(地方厚生局経由) |
| 第三種 | 認定再生医療等委員会 | 地方厚生局長 |
よくある誤解
① 「薬機法の再生医療等製品」と同じ話ではない法第2条第4項は、特定細胞加工物を「再生医療等に用いられる細胞加工物のうち再生医療等製品であるもの以外のもの」と定義しています。製品として承認を取って販売するルートは薬機法の側で、製造販売には第23条の20の許可、製造には第23条の22の許可が必要です。自由診療・臨床研究で使う細胞と、承認を受けた製品とでは、適用される法律そのものが違います。
② 2025年の法改正で幹細胞培養のルールが一新されたわけではない令和6年法律第51号による改正では、細胞加工物を用いない遺伝子治療(核酸等)が法の対象に加わりました。条文上の用語が「特定細胞加工物」から「特定細胞加工物等」(特定細胞加工物と特定核酸等)に広がったのはこのためです。許可と届出の区分(第35条・第40条)という骨格は、幹細胞培養についても引き続き同じです。
③ 研究だけなら不要、と自己判断しない法の対象となる「再生医療等」は、第2条第1項で「再生医療等技術を用いて行われる医療」と定義されています。患者に使わない基礎研究の培養はこれに当たらないと読めますが、臨床研究に移る段階からは対象になります。線引きに迷う場合は、着手前に地方厚生局へ確認するのが確実です。
まとめ
- 幹細胞培養の手続きは、施設の場所と実施者で決まる(院内・薬機法許可施設=届出/外部施設=許可/海外=認定)
- 許可は5年ごとの更新が必要で、PMDAの調査と手数料がかかる
- 培養施設の手続きとは別に、治療を提供する医療機関は再生医療等提供計画を出す
- 承認を取った「再生医療等製品」は薬機法のルートで、別の許可体系になる
医療機器の業許可の考え方と比べたい方は、医療機器製造業の登録申請|東京都の手続き・必要書類・期間と医療機器製造販売業の許可申請|東京都の手続き・必要書類・期間もあわせてご覧ください。
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