医療機器の製造業と製造販売業の違い|許可・登録・責任者を比較

医療機器の事業を始めるとき、最初につまずきやすいのが「製造業」と「製造販売業」の違いです。

名前は似ていますが、役割も、手続きの種類も、置くべき責任者も別です。「工場を持たないから製造業は関係ない」「製造業の登録があるから自社で売れる」といった思い込みのまま準備を進めると、申請の直前で手続きが足りないことに気づくことになります。

この記事では、2つの違いを薬機法(医薬品医療機器等法)の条文をもとに整理し、自社の事業ではどちらが必要になるのかを判断できるようにします。

結論:製造販売業は「市場に出す責任」、製造業は「作る工程」

先に結論をお伝えします。

  • 製造販売業:製品を市場に出す(出荷する)ことに責任を負う。会社ごとに許可を受ける
  • 製造業:設計・組立て・滅菌・保管などの工程を行う。製造所ごとに登録を受ける

薬機法は「製造販売」を、製造等をし、または輸入をした医療機器を、販売・貸与・授与すること(医療機器プログラムの場合は電気通信回線を通じて提供すること)と定義しています(法第2条第13項)。ここでいう製造等には、他社に委託して製造する場合が含まれ、他社から委託を受けて製造する場合は含まれません。

つまり、自社で作っているかどうかは関係がなく、自社の名前と責任で製品を市場に出す会社が製造販売業者です。反対に、製造業は実際の工程を担う立場で、製造業の登録だけでは製品を市場に出すことはできません。

違いを一覧で比較

項目 製造販売業 製造業
手続き 許可(法第23条の2) 登録(法第23条の2の3)
単位 会社(事業者)ごと 製造所ごと
区分 第一種・第二種・第三種(扱う医療機器のクラスによる) 種別の区分はない
審査で見られること 製造管理・品質管理の体制と、製造販売後安全管理の方法が基準に適合していること。申請者が欠格事由に当たらないこと(法第23条の2の2) 申請者が欠格事由に当たらないこと(法第23条の2の3第4項)
置くべき責任者 医療機器等総括製造販売責任者(法第23条の2の14第1項) 製造所ごとの責任技術者(同条第5項)
有効期間 5年(施行令第36条) 5年(施行令第37条の7)
申請先 総括製造販売責任者が業務を行う事務所の所在地の都道府県 製造所の所在地の都道府県

申請先は、法律の条文上は厚生労働大臣ですが、人に使用する医療機器については都道府県知事が事務を行うこととされています(施行令第80条第3項)。事務所と製造所が別の都道府県にある場合は、申請先も別になります。

製造販売業の種別については医療機器製造販売業の第一種・第二種・第三種の違い|要件と選び方で、責任技術者の資格要件については製造業許可に必要な資格要件:責任技術者で解説しています。

品目の承認・認証・届出を行うのは製造販売業者

もうひとつの大きな違いは、品目ごとの手続きを誰が行うかです。

医療機器を市場に出すには、業の許可とは別に、品目ごとに次のいずれかの手続きが必要です。

手続き 対象 根拠
承認 下の2つに当たらない医療機器 法第23条の2の5
認証(登録認証機関が行う) 厚生労働大臣が基準を定めて指定する高度管理医療機器・管理医療機器 法第23条の2の23
届出 承認・認証の対象にならない医療機器(一般医療機器) 法第23条の2の12

国内の事業者の場合、これらの手続きを行うのは製造販売業者です。承認は、申請者が品目の種類に応じた製造販売業の許可を受けていなければ与えられません(法第23条の2の5第2項第1号)。製造業の登録だけで品目の承認を取ることはできない、ということです。

一方で、製造業の登録は品目の手続きにも関わります。承認の審査では、その医療機器を製造する製造所が登録を受けていないときは承認が与えられません(法第23条の2の5第2項第2号)。製造を委託する場合、製造販売業者は委託先が登録を受けているかを確認しておく必要があります。

承認・認証にともなう調査についてはQMS適合性調査とは|申請から完了までの流れと準備すべきことをご覧ください。

事業のパターン別:どちらが必要か

事業のパターン 製造販売業 製造業
自社で製造し、自社の製品として販売する 必要 必要(工程を行う製造所ごと)
製造を他社に委託し、自社の製品として販売する 必要 委託先の登録が必要。自社で行う工程があればその拠点も
他社から委託を受けて製造するだけ 不要 必要
海外の製品を輸入して販売する 必要 国内で最終製品を保管する拠点は登録の対象

海外の製造所については、外国製造業者としての登録の制度があります(法第23条の2の4)。

見落としやすいのは「設計」と「保管」

実務でよく問題になるのは、製造を委託している会社の自社拠点です。

製造業の登録が必要な工程は、施行規則第114条の8で医療機器の種類ごとに定められています。

医療機器の種類 登録の対象となる工程
医療機器プログラム 設計
医療機器プログラムを記録した記録媒体 設計、国内における最終製品の保管
一般医療機器 主たる組立てその他の主たる製造工程、滅菌、国内における最終製品の保管
上記以外の医療機器(再製造単回使用医療機器を除く) 設計、主たる組立てその他の主たる製造工程、滅菌、国内における最終製品の保管

組立てを外部の工場にすべて委託していても、設計を自社で行っている場合や、完成した製品を自社の倉庫で保管している場合は、その拠点が製造業の登録の対象になることがあります(一般医療機器の設計は対象外です)。

「工場を持たないので製造業は不要」と判断する前に、設計・組立て・滅菌・保管のそれぞれを、どの会社のどの拠点が担うのかを書き出して確認することをおすすめします。判断に迷う場合は、製造所の所在地の都道府県の担当窓口に事前に相談するのが確実です。

東京都での具体的な手続きは、次の記事で解説しています。

まとめ

  • 製造販売業は製品を市場に出す責任を負う立場で、会社ごとの許可。製造業は工程を担う立場で、製造所ごとの登録
  • 製造を委託していても、自社の製品として市場に出すなら製造販売業の許可が必要。受託製造だけなら製造業の登録のみ
  • 品目の承認・認証・届出を行うのは製造販売業者。ただし、製造所が登録を受けていなければ承認は与えられない
  • 責任者も別。製造販売業は総括製造販売責任者、製造業は製造所ごとの責任技術者
  • 委託製造でも、設計や最終製品の保管を自社で行う拠点は登録の対象になることがある

製造販売業の許可と製造業の登録をあわせて準備する場合や、QMS省令に沿った文書づくりでお困りの場合は、お気軽にご相談ください。必要な文書の全体像はQMS省令・ISO13485の手順書一覧|必要な文書と作り方で整理しています。

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